公益社団法人 自衛隊家族会会長 増田 好平



会長  増田 好平 

  初夏の候 益々ご清祥のこととお慶び
 申し上げます
       

   自衛隊家族会の会長を務めさせていただいております増田好平です。
   
  
 今年の干支は、「癸卯(みずのとう)」です。調べてみると、「癸」
  は十干の最後に位置し、次の生命を育む準備が完了した状態を表してお
  り、「卯」は草木が地面をおおうようになった状態を表しており、萌え
  出る春のイメージであり、総じて、「癸卯」は、「寒気が緩み、萌芽を
  促す年」であるとのことであります。私なりに解釈すれば、コロナ禍が
  収束し、新しい活動にとりかかるのに最適な年ということになるのでは
  ないでしょうか。


  
 昨年は、前述のように総会が久しぶりに対面で行われました。
  やはり、全国から皆さんにお集まりいただき、フェイス・トゥ・フェイ
  スでお話しを進めることの意義は大なるものがありました。


  
 11月10日には、令和4年度新任会長・事務局長等研修会を、3
  ぶりにこちらも対面で行うことができました。新任会長・事務局長等研
  修会には、3年分の対象者の方々、即ち、この3年の間に県家族会長や
  県家族会事務局長に就任された方々にお集まりいただきました。その意
  味で、いつもよりはたくさんの方々が久しぶりに、一堂に会して、家族
  会の組織、現状の課題等に関する説明を受けていただき、また、新任会
  長・事務局長等から、さまざまなご質問やご指摘等をいただき、全体と
  して、非常に熱心な形で議論が行われたところでございました。


 
  このような活動を踏まえて、令和5年癸卯の年に新たな活動にとりか
  かるべきと改めて感じている次第です。


 
  さて、昨年は、安全保障、防衛という側面からみれば、歴史的に大き
  な出来事がいくつかありました。


  
 その第1は、いうまでもなく、昨年2月24日に始まった、ロシアに
  よるウクライナへの侵略でしょう。安定的な国際秩序の大前提となる、
  力による一方的な現状変更やその試みを行わないという大原則が、こと
  もあろうに、国連安全保障理事会の常任理事国によっていとも簡単に破
  られてしまいました。私たちは、わが国の安全保障、防衛というものを
  根本的に再検討しなければならなくなってしまったといえるのではない
  でしょうか。


  
 その第2は、昨年12月16日に、前述のロシアによるウクライナへ
  の侵略、累次にわたる北朝鮮によるミサイル発射や中国の挑戦的な軍事
  動向等を踏まえて、いわゆる3文書、即ち、「国家安全保障戦略」、こ
  れまでの防衛計画の大綱に代わる「国家防衛戦略」およびこれまでの中
  期防衛力整備計画に代わる「防衛力整備計画」が閣議決定されました。
 
   その内容は、画期的、かつ、歴史的なものです。当日の記者会見で
  岸田総理は、3つのポイントを挙げられました。
   1つ目は、相手にミサイル攻撃を思いとどまらせる抑止力としての
  「反撃能力の保有」です。
   2つ目は、「宇宙、サイバー、電磁波等の新たな領域における対応」
  能力の質・量両面での強化です。
   3つ目は、南西地域の陸上自衛隊の中核となる部隊の倍増、部隊を迅
  速に展開するための輸送機や輸送船舶の増強、尖閣諸島を守るための海
  上保安庁の能力増強、防衛大臣による海上保安庁の統制要領を含む自衛
  隊との連携強化等を内容とする「南西地域の防衛体制の強化」です。
 
   こうした取組を始め、弾薬等の十分な整備費の確保、隊員の処遇改善
  などを含め、今後5年間で43兆円程度の防衛力整備計画を実行すると
  いうことです。

   そして、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を合わせて、令和
  9年度には現在のGDPの2%に達することとなるよう予算措置を講ず
  るということです。
   その結果、防衛力整備計画によれば、令和9年度の防衛関係費は、8
  兆9千億円程度ということで、令和4年度の約1.7倍になると見込ま
  れます。

   それから、われわれの活動との関係では、「国家防衛戦略」の「人的
  基盤の強化」の項に、「自衛隊員の家族や関係団体等との連携を含めた
  家族支援の拡充・・等に引き続き取り組む」と記述され、「防衛力整備
  計画」の「人的基盤の強化」の「生活・勤務環境の改善等」の項に「地
  方公共団体や関係団体等と連携した家族支援施策を拡充する」と記述さ
  れています。
   私の記憶が正しければ、関係団体等との連携に触れたのは初めてのこ
  とだろうと思います。その意味で、家族支援という分野を中心として、
  今後より一層、われわれと防衛省・自衛隊との連携の拡充強化が必要と
  なり、また、重要になってくるのではないかと思っております。
   まさに、「癸卯」の年にふさわしい状況なのではないでしょうか。

   最後に、自衛隊家族会の会員およびおやばと愛読者をはじめとする
  皆さまにとって、本年が平穏で実りある年になることを祈念して、私の
  挨拶といたします。


 学 歴

  昭和50年3月

    東京大学法学部卒業


 経 歴

  昭和50年

   防衛庁入庁(長官官房総務課)

  平成10年 6月

   防衛局防衛政策課長

  平成13年 1月

   長官官房審議官

  平成14年 8月

   (併)内閣審議官(内閣官房副長官補付)

  平成16年 4月

   内閣官房内閣審議官

  平成17年 8月

   防衛庁防衛参事官(統合運用・IT担当)
 
  平成18年 8月

   人事教育局長

  平成19年 8月

   防衛事務次官

  平成21年 9月~平成30年10月

   防衛省顧問

  平成22年 7月~
 
   明治安田生命保険相互会社顧問

  平成23年 2月~
 
   NPO法人 宇宙利用を推進する会 理事長

  平成25年 6月~令和 4年 6月

   公益社団法人 隊友会 常務理事

  平成29年11月 ~

   一般社団法人 市ヶ谷論壇 理事長

  令和 3年 瑞宝重光章 受賞